「課税売上割合に準ずる割合」
前回に引続き、消費税の仕入税額控除の計算で個別対応方式を適用する場合において用いることができる「課税売上割合に準ずる割合」について解説をしていきます。
今回は「課税売上割合に準ずる割合」を実際に使用する場合についてご紹介したいと思います。
1. 適用が認められる場合
課税売上割合に準ずる割合は、事業者全体の本来の課税売上割合が事業の実態に合っていない場合において、本来の課税売上割合に代えて事業の実態を反映する割合があり、かつ、その割合が合理的であると認められる場合に限り適用が認められます。
そのため、課税売上割合に準ずる割合を用いる場合に、その割合が"事業の実態に合っているのか"が問われ、客観的にみて合理的ではないと判断されるような場合には承認が受けられないものと思われます。
2. 例示されている課税売上割合に準ずる割合
例示されている課税売上割合に準ずる割合として、「従業員割合」「床面積割合」「取引件数割合」についてご説明します。
(1) 従業員割合
課税売上割合に準ずる割合として例示されている従業員割合とは、従業員数を、「課税資産の譲渡等にのみ従事する従業員数」と「非課税資産の譲渡等にのみ従事する従業員数」に区分できる場合における下記の割合をいいます。
したがってこの割合は、共通して要する課税仕入れ等のうち、従業員数に比例して支出されると認められるものが対象になるものと考えられます。
課税資産の譲渡等にのみ従事する従業員数 | = | 従業員数割合 | ||
課税資産の譲渡等にのみ | + | 非課税資産の譲渡等にのみ | ||
(2) 床面積割合
課税売上割合に準ずる割合として例示されている床面積割合とは、床面積を、「課税資産の譲渡等に係る業務で使用する床面積」と、「非課税資産の譲渡等に係る業務で使用する床面積」に区分できる場合における下記の割合をいいます。
したがってこの割合は、共通して要する課税仕入れ等のうち、専用床面積に比例して支出されると認められるものが対象になるものと考えられます。
課税資産の譲渡等に係る業務で使用する専用床面積 | = | 床面積割合 | ||
課税資産の譲渡等に係る | + | 非課税資産の譲渡等に係る 業務で使用する専用床面積 | ||
(3) 取引件数割合
課税売上割合に準ずる割合として例示されている床面積割合とは、取引件数を、「課税資産の譲渡等の件数」と「非課税資産の譲渡等の件数」に区分できる場合における下記の割合をいいます。
したがってこの割合は、共通して要する課税仕入れ等のうち、製造原価に含まれるもの以外のもので、取引件数に比例して支出されると認められるものが対象になるものと考えられます。
課税資産の譲渡等に係る取引件数 | = | 取引件数割合 | ||
課税資産の譲渡等に係る | + | 非課税資産の譲渡等に係る 取引件数 | ||
3. まとめ
課税売上割合に準ずる割合は、個別対応方式における本来の課税売上割合が各事業の実態を適切に反映していない場合に、課税売上割合に準ずる割合を用いることで各事業の取引について適切な割合による仕入税額控除をすることができる制度です。
そのため、本来の課税売上割合が土地の売却等により大きく減少した場合など、事業の実態が課税売上割合に適切に反映されておらず、各事業ごとに課税売上割合に準ずる割合を用いて計算したほうが税務上、有利となる場合にはこの制度を活用しましょう。
2012/10/22
- 消費税