遺言書を書くと得をする?
政府は7月7日、有効な遺言による相続を条件として、一定額を相続税の基礎控除額に上乗せして控除する「遺言控除」を新設する方針を固めた。
8日、自民党の「家族の絆を守る特命委員会」で、葉梨康弘法務副大臣が制度の概要を説明した。
相続税は、遺産総額から基礎控除額(2015年1月から3千万+法定相続人1人あたり600万円)を差し引いたうえで税率を乗じて算出される。遺言控除はこの基礎控除に上乗せする形で導入される。
日本では、財産を残す人が遺言を用意するなど相続対策を取っているケースは少ない。相続税課税対象のうち、遺言を残した案件は現在2~3割程度に留まっている。統計によると、公正証書として作成された遺言や、自筆証書遺言の件数は年々増加傾向にあるが、相続の発生件数に比してまだまだ少ないのが現状である。政府の狙いとしては、遺言の普及を後押しし、相続をめぐるトラブルを未然に防ぐ意図がある。
しかし一方で、遺言があれば紛争は防げるという点に疑問を投げかける声もある。遺言の形式(自筆か公正証書か等)、遺言が複数ある場合、遺言の内容(遺留分を侵害しているか否か等)、遺言の信憑性や筆跡鑑定の精度によっては、かえって紛争を誘発するケースもあるようだ。
今後の新制度には、相続人間のトラブル防止以外の効果も期待されるところである。
2015/08/03