[書評]「のび太」が教えてくれたこと (武田)
ドラえもんは、見たことがない人もいますが、まず知らない人はいない国民的な漫画ですね。
私も幼かった頃に、新幹線に乗るときに駅の売店にあったものを、両親に初めて買ってもらった漫画だったことを思い出します。
著者の横山氏は、ドラえもんの全作品を集めて研究されており、「ドラえもん学」を提唱されています。
この本では、のび太という生き方について、最も人間らしく生きている存在であり、最高の相棒であるドラえもんのチカラを借りて、作品を通じて成長しているところを評価し、のび太は実はダメ人間ではなく、人生を上手く生きる天才としています。
そして、のび太の言葉からは学べる教えがいっぱい!として、様々なシチュエーションの中の「せりふ」を入り口にのび太からどのような教えを得ることができるのかを考察しています。
「小さな進歩を大いに喜ぼう」
ここでは、意志の弱いのび太はにドラえもんに、決めたことを達成するまで執拗に追いかけてくるひみつ道具「つよい石」を出してもらいます。
しかし、設定を間違えて、のび太はその石にいつまでも追いかけられてしまい、「強すぎる意思は身を滅ぼす」という名言を残します。
ここで著者は、一度決めたことをやり遂げる強い意志は必要だが、その意思は柔軟であるべきだと提言します。
一足飛びに達成できなければダメではなく、少しずつでも近づいていけている進歩を評価して、素直に喜べばいいといっています。
そういった点でも、のび太ののんびりした姿勢を見習っていきましょうとくくります。
このように、人生を楽に自分らしく生きるヒントを、のび太からたくさん学べるとしながらも、直接的な解決策は教えていないかもしれず、しかし、生きる上でどんな問題に気づくべきかは教えてくれるのがのび太であると著者は述べています。
このような視点から見ると、ドラえもんという漫画が描かれた時代は、人生の教訓を含んだとても奥深いものが多いんじゃないかなぁと、個人的に思いました。
2012/03/16