川端雅彦コラム「人材不足時代をいかに乗りきるか?」
ほとんどの業界において人材の獲得が非常に困難な状況に追い込まれています。人材難が足かせとなり、成長の機会を取り込めない、成長を加速できない企業も出てきています。
とりわけ、20代の若手や中堅の人たちの意識が変わり、職場環境が良くても成長機会の乏しい企業に背を向けるようになってきています。
転職支援サービスのエン・ジャパンの34歳以下を対象にした調査によると、大手から新興企業に転職した人の数は、5年前の18倍となっているそうです。
これらの人たちの転職の動機は、安定よりも自分の成長に変わってきています。右の図を見ていただくと、20代の成長環境は2012年のそれよりも、むしろ悪化してきており、これらを裏付ける結果となっています。
しかしながら、これは逆に中小企業にとっては、チャンスととらえることができます。
中小企業は、もともと人材難であり、既存事業にドライブをかけようとしても、あるいは、あらたな事業を立ち上げようとしても、なかなかそれを任せられる人材に恵まれていません。
こういった人材に中堅・大企業からの転職を促し、次世代を担う人材として活躍してもらう機会が増えてきているわけです。
もちろん、そのためには、様々な条件をクリアーする必要がでてきます。
例えば、そういった自己の成長機会を求める人材には、官僚的な仕事ではなく、大きな権限と責任のある仕事を任せ、やる気を引き出す必要があります。
そのためには、魅力ある会社と事業のビジョンをトップが熱く語ることが大切です。
あるいは、そのような人材を採用しようとすると、今の人事制度に基づく待遇では魅力が乏しいため、今の社員とのアンバランスを覚悟の上で、思い切った条件を提示しなければならないかと思います。
これらをクリアーするには、トップが自ら陣頭指揮を執って制度改革に動く必要があります。同時に、そのことによる軋轢を丁寧な議論を通じてなくしていくことも必要となるでしょう。
また、そのような待遇面における条件をだせるだけの、高収益の体質も作り上げておくことも必要不可欠です。
日本の人口動態からすると、少子高齢化、それに伴う労働力不足が、これからどんどん加速していく状況は、変わらないと思います。
その変わらない状況の中で、企業が生き残りをかけるなら、企業自体が変わらないとダメだと思うのです。
人材不足という制約条件は、解除の対象に過ぎないと頭を切り替えることが、いま、中小企業が直面する課題にたいする答えなのではないかと思います。
令和5年12月6日
アイネックス税理士法人 代表 川端雅彦
2023/12/08
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