小規模宅地特例を活用するにあたり
小規模宅地等の特例は、「この面積までは相続税をかけないようにする」という面積的な基礎控除をいいます。その面積までの土地は大幅な減額となります。
1:宅地の選択について
例えば以下の3宅地があったとします。
(1)居住用宅地(自宅)は330㎡まで8割引(1億円の評価額とするなら適用後2,000万円に下がる)
(2)事業用宅地(店舗工場役務提供)は400㎡まで8割引
(3)賃貸用宅地(アパート貸ビル・アスファルト)は200㎡までは5割引
上記について、平成27年1月1日以降相続開始分からは、(1)330㎡と(2)400㎡は併用適用ができ、合計最大で730㎡までいけます。しかし、一方で(3)200㎡を適用すると(1)との併用適用はできず、(1)330㎡を適用すると(3)との併用適用はできなくなります。
例えば、以下Aさん、Bさんがいたとします。(1㎡あたりの単価を10万円とします。)
① Aさんは小売業自営をされており、相続財産は店舗敷地400㎡と自宅330㎡です。
事業用400㎡を選択した場合、自宅330㎡併用適用が可能で、合計730㎡が8割引の対象になります。
課税対象額は1,460万円(=土地7,300万円-減額80%分5,840万円)となります。
② Bさんは不動産賃貸業自営をされており、相続財産はアスファルト駐車場の賃貸用宅地400㎡と自宅330㎡です。
賃貸用400㎡を選択しても200㎡分のみ5割引の対象になるだけで、賃貸用200㎡まで選択した場合、自宅での8割引適用は不可となります。課税対象額は6,300万円(=土地7,300万円-1,000万円※)となります。
※200㎡部分の2,000万円に5割引したものです。逆に、自宅330㎡を選択した場合は、賃貸用部分は適用不可になります。
従って、AさんもBさんも所有宅地が同じ730㎡でもかかわらず、小規模宅地特例適用後の評価額に差がついてしまいます。
不利なBさんはどう対策を取ればいいでしょうか?
2:Bさんにおける用途の変更
Bさんの相続対策は、例えばですが貸駐車場から有料洗車場への商売替えが方法としてあります。
すなわち賃貸用適用ではなく、事業用適用になります。
人を雇いコイン洗車場を並べ有料洗車場業をすることで、この400㎡の宅地に8割引適用すると同時に自宅8割引を適用OKになります。この結果、Aさんと同じになります。
また、店舗経営をすればどうでしょう・・・・。
賃貸店舗で敷地400㎡とすると事業用になるように目を向けます。具体的方法としては、賃借人を退去させ、自ら店舗経営を始め事業用にすることです。
多少の赤字を覚悟しなければならないこともあると思いますが・・・・。
3:賃貸マンションを今ブームの民泊に変更するのであれば
ネット(Airbnb等)で集客での民泊が繁盛してますね。旅館業法違反と言われ一部制度化が見直されている中、訪日客に宿を提供したとします。
この場合、敷地400㎡20戸賃貸マンション全室を民泊事業に転じることになりますが、まず所得税法上は賃貸業ではなくホテル業となる為、不動産所得ではなく事業所得になるでしょう。
相続税法上も事業用となればAさんと同じになります。
4:まとめ
このように、事業用宅地と居住用宅地の完全併用が平成27年1月1日以降適用され、今後の相続対策の1つとして、用途を変更することで有利になるケースがあるかと思います。
貸付事業用宅地があることで不利になるケースがあるので、対策を取られた方がいいですね。
2015/10/29
- 相続税・贈与税