執行役員への地位変更に伴う一時金の取扱いが明確化されました!
従来、執行役員制度の導入により、社員を執行役員へと地位変更した場合、退職金として一時金を支給しても、退職所得ではなく、給与所得として取り扱われていました。
今回、その一時金を退職所得として取扱うことができる要件が明確にされました。
◆今回の改正による影響
退職所得は給与所得に比べ一般的に緩やかな課税であることは、以前にもお伝えしました。 ...8/28 税務情報ヘッドライン「退職金の課税が強化される!?」参照
そのため、執行役員就任に伴い、一時金を受取る社員は、退職所得として取り扱うことができると、税負担の面で有利となる傾向があります。
しかし、退職所得についてはこの先に課税の強化が検討されています。
よって、執行役員の就任に際しての一時金の支給を考えておられる場合は、課税の強化前に支給されると、受給者側の税負担の軽減をはかることができそうです。
◆執行役員制度とは?
「経営と事業執行の分離により、機動的、効率的な経営の実現を目的とした制度」であり、以下のようなメリットがあります。
(1) 取締役を執行役員へすることで、取締役会のコンパクト化を図れる。
(2) 企業の組織変更に伴い、迅速に取締役会で意思決定や執行を行える。
(3) 執行役員は「使用人」であるため、法人税法上、給与が損金算入されやすい。
◆執行役員就任に伴い支給された一時金の取扱いについて
具体例1・・・取締役が執行役員への就任に伴い、一時金が支給された。
▸取締役(役員)→執行役員(使用人)
この場合、一度取締役の退任があるため、取締役の職務に対応している支給金額は原則的には退職所得に該当します。
ただし、以下の要件に該当しない場合は、給与所得と取り扱われるため注意して下さい。
(1) あらかじめ役員の退職金規定等がもうけられていること。
(2) 取締役と執行役員との地位変更が繰り返されていない事。(形式的な地位変更でないこと。)
具体例2・・・部長が執行役員への就任に伴い、一時金が支給された。
▸部長(使用人)→執行役員(使用人)
【改正前】・・・給与所得として取扱う
結局は部長から執行役員への昇任であり、使用人としての地位に変わりはありません。
ゆえに、支給金額は賞与(給与)であり、給与所得に該当するとされていました。
【改正後】・・・一定の要件により退職所得として取扱う
今回の改正により、執行役員との関係が次の要件のすべてを満たす場合は、退職所得として認められることとなりました。
*要件
(1)委任契約であること。(類するものを含む。)
(2) 退任後に使用人としての再雇用が保証されたものでないこと。
(3) 服務規律等が役員に準じていること。
(4) 経営者に生じた損害について賠償する責任を負うこと。
また、たとえ上記要件を満たさない場合であっても、使用人から執行役員への就任が「重大な地位変動である」など個々の事例の実質的内容により、退職所得と判断される場合があります。
2007/09/27
- 所得税