事前確定届出給与とは?〜その3〜
前回・前々回から引き続き事前確定届出給与についてお伝えいたします。
前々回 https://www.i-nex.co.jp/headline/post_61
前回 https://www.i-nex.co.jp/headline/post_62
最終回となる今回は、具体例を交えてQ&A形式でご説明いたします。
Q.当社では、19年6月26日の株主総会において、A取締役に対して、定期同額給与のほかに、「19年6月26日から19年12月25日までの役員給与として19年12月25日に300万円を、19年12月26日から20年6月26日までの役員給与として20年6月26日に300万円をそれぞれ支給する」旨の定めを決議しました。
この定めに従って支給する役員給与の届出は、支給時期が異なる給与ごとに届け出なければならないのでしょうか。
A.役員給与は、一般的には、定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価と解するのが相当と考えられます。
したがって、事前確定届出給与の職務執行期間も定時株主総会終結の時から開始されることとなり、「職務の執行を開始する日」とは定時株主総会の開催日ということになります。
ところで、ご質問では、事前確定届出給与に係る「定め」において、「○月から×月までの給与を×月に、△月から◇月までの給与を◇月に支給する」などの定めを行ったとのことですが、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの1年間の職務執行の対価ですから、仮にそのような「定め」を定めたとしても、それは、会社が役員に委任した職務執行の対価について期間の経過に応じて支払う旨を明らかにしたにすぎず、いわば1年間にわたる職務執行期間の給与の支給方法を定めたにすぎません(それぞれ別個の「定め」が定められたわけではありません。)。
したがって、そのような「定め」であっても、特殊な場合を除き、その役員の職務の執行を開始する日は、定時株主総会の開催日であり、所轄税務署長への届出も同日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までが届出期限となります。
Q.金銭以外の現物資産による支給であっても、事前確定届出給与の対象となりますか。
A.事前確定届出給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与がその対象となります。
したがって、現物資産による支給など支給金額が確定していないものは対象となりません。
Q.事前確定届出給与について、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、どのように取り扱われるのでしょうか。
A.事前確定届出給与として当該事業年度の損金の額に算入される給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られます。
このことからすれば、一般的には、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前に支給額が確定していたものといえないことから、事前確定届出給与に該当しないものとなります。
したがって、それが増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額が損金不算入となり、減額支給であれば実際に支給した金額が損金不算入となります。
2006/08/30
- 法人税