軽減税率導入に伴う売上・仕入税額の計算の特例
消費税の10%の増税まであと1年をきりました。
今回は平成29年4月1日からの消費税率の引き上げに伴う軽減税率導入について紹介していきます。
その中でも売上税額と仕入税額の計算の特例について取り上げたいと思います。
1.売上税額の計算の特例
8%と10%との複数税率制度では、事業者は、税率ごとの商品管理や区分経理を行う必要があります。しかし、これに対応できない事業者も想定されることから、経過措置として売上税額を簡便に計算する特例が以下の3つ設けられます。
1.10日間特例
2.卸小売特例
3.50%特例
1)の計算は、売上高に占める軽減税率の対象となる金額が不明な場合に、サンプルとして通常の連続する10営業日における軽減税率対象品目の売上の割合で、その課税期間の軽減税率適用の売上高を計算する方法です。
2)の計算は、売上高に占める軽減税率の対象となる金額が不明な場合で、卸売業や小売業に限定して認められる方法です。卸売業や小売業は、仕入れてそのままの状態で販売しますので、軽減税率対象品目の仕入の割合で、その課税期間の軽減税率適用の売上高を計算するという方法です。
3)の計算は、主として軽減税率対象品目を取り扱う事業者について、売上高に占める軽減税率の対象となる金額が把握できない場合に、売上高の50%を軽減税率適用の売上高とする方法です。主として、軽減税率を対象とする事業に認められる方法ですので、通常は実態で計算するよりも不利になることが想定されます。
これらの特例は、中小企業者(基準期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者)については平成33年3月31日までの4年間、適用することが出来ます。
また、中小企業者以外の事業者については平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間において、適用することができます。したがって、3月末決算の場合には1年間の適用期間となりますが、2月末決算で特例の適用がない場合には、1年11カ月の適用期間となります。
2.仕入税額の計算の特例
仕入税額の計算についても、次の3つの特例が設けられます。
4)卸小売特例
5)簡易課税制度の事後選択
6)中小企業者以外の事業者の簡易課税に準ずる計算
4)の計算は、課税仕入れに係る軽減税率の対象となる金額が不明な場合で、売上の2)の計算と同じように、卸売及び小売について、軽減税率対象品目の売上の割合で、その課税期間の軽減税率適用の仕入高を計算する方法です。
なお、この特例は、事業者の規模を問わず、平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの期間において適用することができます。
5)の計算は、基準期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者について、通常は課税期間が始まる前に届けが必要な簡易課税について、平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を開始することが出来ます。
6)の計算は、基準期間における課税売上高が5,000万円を超える事業者についても、平成29年4月1日から平成30年3月31日の属する課税期間の末日までの間は、その課税期間の末日までに届出を行うことにより、簡易課税に準じた方法により控除対象仕入税額を計算することができる方法です。
今回紹介しました軽減税率導入に伴う売上・仕入税額の計算の特例以外にも、具体的にどういったものが軽減税率の対象となるのかについて、国税庁消費税軽減税率制度対応室より『消費税の軽減税率制度に関するQ&A』が公表されています。
その他、ご不明点があればお気軽に弊社までお問い合わせください。
アイネックス税理士法人 小田根
2016/04/20
- 消費税