役員退職金の損金算入に関する注意事項
役員に対して支給する退職金について注意しなければならない事項は、適正額の算出だけではありません。経理方法や一定の要件を満たさなければ、損金の額に算入されない可能性があります。
そこで、役員退職金について最も基本的な事項をまとめましたので、ご紹介いたします。
【1.役員退職金の損金算入時期】
役員退職給与の損金算入時期については、以下のとおりです。
原則:株主総会の決議等で確定した日の属する事業年度
例外:支払事業年度(実際に支払った事業年度に損金経理を行っている場合のみ)
原則の場合は、損金経理は必要ありませんが、例外の場合は、損金経理が必要となりますので、ご注意ください。
なお、取締役会の内定額を未払計上し、その後の事業年度に確定した場合には、内定事業年度にはその額は損金算入されず、確定事業年度の損金となります。
【2.分掌変更等による役員退職給与】
分掌変更等によって役員退職給与を支給する場合には、「役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にある」と認められなければ、損金の額に算入されません。
「役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にある」とされる事実は、基本通達において以下のように例示されています。
(1)常勤役員が非常勤役員になったこと。
(2)取締役が監査役になったこと。
(3)分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。
※ただし、分掌変更後も実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者等を除く。
(参考)
<役員の分掌変更等の場合の退職給与(法人税基本通達9-2-32)>
法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことが出来る。
(1)常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。
(2)取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。
(3)分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。
【3.役員退職引当金経理】
上記のように、支払事業年度において役員退職給与を損金算入する場合には、損金経理が必要となりますが、特に、役員退職引当金による経理処理を採用している場合においては、支払に係る損金経理の処理と引当金の取崩処理を併せて行う必要がありますので、ご注意ください。
※国税庁HPの損金経理要件に関するページに、以下の内容の記述がありますので、ご紹介いたします。
(1)役員退職引当金から直接支出する経理の場合には、損金経理されていないため、
損金の額に算入されない。
(借方)役員退職引当金 800万円(貸方)現金預金 800万円
(2)法人が支給した役員退職給与を損金の額に算入し、利益積立金を利益に戻し入れてその補てんに充てた場合は、損金経理したものとして取り扱う。
支給額は損金経理し、役員退職積立金を利益に戻し入れる経理
(借方)役員退職金 800万円(貸方)現金預金 800万円
(借方)役員退職引当金 800万円(貸方)役員退職引当金取崩益 800万円
上記の仕訳を前提として、上記の仕訳に、次の仕訳を追加した場合にも、帳簿記録には損金経理をしたことを認めている。
(借方)役員退職引当金取崩益800万円 (貸方)役員退職金800万円
この場合は、税務当局に提出する決算書等に注記することにより、税務当局に対して会社の損金経理の意思表示を明確にすれば認められる。
参照:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/)
2015/07/30
- 相続税・贈与税