「居抜き譲渡」での譲渡所得は損益通算できる?
飲食店などを廃業又は新規開業する際に、店舗の土地建物、内装、設備をそのままの状態で売買、賃貸するケースがあります。このような手法は、「居抜き譲渡」と呼ばれています。
「居抜き譲渡」は、廃業する側と新規開業する側が同業種を営んでいる場合に行われる事が多く、原状回復費用や初期開業費用を削減できる事、スピーディーに開業が行える事などがメリットとなります。
今回は、個人事業者が「居抜き譲渡」を行うにあたって所得税法上留意すべき点についてお伝えいたします。
1.分離課税か、総合課税か
通常、土地や建物を売却した際の譲渡所得に対する税金は、他の所得とは分離(分離課税)して計算をする事となります。
「居抜き譲渡」の場合、土地や建物の他に業務用冷蔵庫などの厨房設備も一緒に譲渡する事が考えられますが、厨房設備の売却は分離課税となる譲渡所得ではないため、他の所得と合わせて総合課税の譲渡所得になります。
一括して譲渡した際の個々の資産が、分離課税の対象となるのか、総合課税の対象となるのかという点に留意して、税金計算をする必要があります。
2.店名や従業員を引継いだ「居抜き譲渡」
実物資産の譲渡のみならず、店名や従業員を引継いだ「居抜き譲渡」を行う場合、無形固定資産としての営業権が発生する場合があります。営業権の譲渡は総合課税の譲渡所得となるため、税金計算を忘れずに行う必要があります。
3.損益通算
厨房設備の売却は総合課税の譲渡所得となると述べましたが、実際には「居抜き譲渡」を行った際には総合課税の譲渡所得は損失となるケースが多いと思われます。この譲渡所得の損失は、他の所得金額と損益通算する事が出来ます。損益通算を行ってもなお損失の金額が生じる場合は、純損失の繰越控除として翌年度に繰越が可能な場合があります。
4.まとめ
「居抜き譲渡」は費用面でもスピード面でも廃業者、新規開業者の双方にメリットのある手法です。
契約上は土地、建物、設備、従業員など全て包括しての譲渡となりますが、税務上は個々の資産を別々に譲渡したとみなして税金計算をする必要があるという点に留意する事が必要となります。
2011/11/11
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