退職金の優遇措置が縮小か!?
近年の税制改正では、平成15年度の配偶者特別控除の廃止、平成16年度の公的年金等控除の上乗せ措置や老年者控除の廃止等、所得控除の見直しが推し進められてきました。
政府税制調査会では、次のターゲットとして退職所得控除の見直しを検討する方針です。
特に優遇されている勤続20年超の場合の課税を強化する方針で少なくとも、勤続年数に変わりなく1年あたりの控除額をそろえるなどの見直しが行われるとみられています。
この改正が実施されると、場合によっては退職金にかかる税額が増加し、手取り額が減少することになってしまいます。
退職所得控除とは?
退職所得の課税金額は次の算式により算定されることとなっており、税制上優遇措置が講じられています。
▸退職所得額=(収入金額−退職所得控除額)×2分の1
退職所得控除額は勤続年数によって控除額が増加していき、20年を境に控除額が増大するしくみとなっています。
●勤続年数20年以下
▸退職所得控除額=40万円×勤続年数(最低80万円)
●勤続年数20年超
▸退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年)
退職所得控除見直しの背景
経営環境が激変する中で、企業は正社員中心の長期継続雇用、年功序列賃金という考え方から非正規雇用者の活用や成果主義・能力給賃金という考え方に移行しています。
一方で、労働者側の職業観は多様化し、企業に対する帰属意識は薄れ、離職・転職は珍しいことではなくなってきています。
これに対し、従来の終身雇用を前提とした退職所得に対する税制的な優遇措置は、まさに年功序列的な仕組みとなっており、就労機会の流動性を阻害するなど、マイナス面が多いと考えられています。
このような状況を背景に、経済社会構造の変化に対応した税制改正の一環として退職所得控除の見直しが検討されています。
2004/08/20
- 所得税