配偶者居住権の活用例
前回、お話した配偶者居住権について、その活用例をご紹介します。
(例)
被相続人 A
Aの相続人:妻、長女、長男の3人
Aの相続財産:自宅3,000万円、預貯金3,000万円 総額6,000万円
相続財産の分け方は、相続人間の話し合いで決めることができ、全員が納得すれば妻が全財産を相続することもできます。しかしながら、相続人同士の仲が悪い、あるいは目一杯財産が欲しいと考える方が相続人の中にいる場合、最終的には法定相続分で相続財産を分けざるをえない場合があります。例えば、このような状態の中、妻が住み慣れた自宅に住み続けたいと考え、何とか自宅(評価3,000万円)を相続できたとします。そうすると、妻の法定相続分に見合う財産は3,000万円(6,000万円×1/2)ですので、預貯金を相続することができず、手持ちのお金がある方はいいのですが、ない方はこれからの生活資金に困窮することになります。
自宅を売却して資金化し分配するという方法もありますが、妻は自宅に住めなくなりますので、「自宅を取るか?お金を取るか?」という選択をしなければならなくなります。
妻がそもそも長女や長男と一緒に住む予定であれば売却という選択は可能ですが、そうでない場合、妻が新しい住まいを見つけるのはそう簡単ではありません。妻が高齢である場合、賃貸物件を借りる際の審査が厳しい傾向があり、住み慣れない家に独りで引っ越すことは、残された妻にとって大きな負担となります。
そこで、配偶者居住権(住む権利)を活用するとどうなるでしょう。
仮に配偶者居住権の評価が1,500万円だとすると、妻は、預貯金1,500万円も相続することが可能となります。そうなれば、住み慣れた自宅を売却せずに引き続き住み続けることができ、今後の生活費も確保できて安心です。
アイネックス税理士法人
相続事業承継部
2020/06/05
- 相続税・贈与税