税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

vol.46「顧客志向型経理部門の脱皮」

■Vol46 2001年10月24日

 企業の大小を問わず、各企業には開発、生産、販売、人事、財務などの経営機能が存在するがそれぞれの部門に「あなたの顧客は誰か?」という質問をした際に、最も困惑されるのが経理(財務)の人達である。

 結論から言うと、経理を含む間接部門の最大の顧客は「経営トップ陣」であるが、その事を明確に意識している経理責任者は、あまりに少ない。

 それがゆえに顧客意識が乏しく、過去から踏襲したやり方に基づき仕事をすることが自己目的化し「経理による経理のための経理」に自己満足しているケースがほとんどである。

 また、中小企業経営者の多くが、生産や販売部門出身であることから、トップ自身、経理の仕事に対する理解が乏しく、「どうも、非効率に見えるが、経理部門で何が行われているかわからない」というトップの嘆きが、この部門のブラックボックス化を象徴している。

 販売部門や開発、生産部門なら、自分の顧客はだれで、顧客はどのようなニーズを持っているのだろうか?そのためにはどのような商品開発が必要か?などと日々考えて行動している。

 これと同じように、経理部門の顧客でありサービスの受益者を「社長及び部門管理者(以下、経営トップ陣)」と定義し、経理部門のサービスを「経営トップ陣の意思決定に役立つ経営管理資料の作成と提供」と定義するなら、経営トップ陣が、どのような情報を提供することで期待を超えられるかを常に意識しなければならない。

 ここで、期待を超えられるかと表現したのは、先述したとおり、経営トップ陣は営業や生産畑出身の方が多く、明確にニーズが存在していない場合があり、経理部門は常に先回りをしなければならないからである。

 また、経理部門は、開発や営業、生産、総務部門などの部門で作られてくる様々な資料に基づき作成されるため、それぞれの部門の活動や、収集される資料に対し無関心ではいけない。

 「この財務資料は、営業部からあがってきたものを合計したものであり、その根拠は定かではありません」といった発言をされる経理責任者は、「私が作った商品でないので、品質の保証は出来ません」といっている営業マンと何ら変らないことになります。

 このように考えると、経理部門はその業務範囲を、たんに「経理事務」という受身でルーティン化された業務として捕らえるのではなく、企業活動全般にまで深く突っ込んで理解し、経営トップ陣の参謀役として立ち振る舞えることが期待される、やりがいのある仕事なのです。

 キャッシュフロー経営や、時価・減損会計、さらには企業再編税制など、企業会計を取り巻く環境は、大きく変りつつあります。それに比例して、経理は、結果の報告ではなく、結果から原因を追求し、あるいは成果の指標を指し示す役割は、ますます重要になってきております。

 そして、経営トップ陣は、サービスの受益者として、経理部門を厳しく評価する役割を担っているのです。

京都・大阪の税理士ならアイネックス税理士法人

2003/10/01

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