税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

vol.40 「情報化のはじまり、はじまり!」

情報化という言葉を聞くと、コンピューターの前に一日中座り、黙々と作業を続けているイメージが想起され、どことなく暗いイメージを連想される方も多いと思う。しかし、情報化と言う言葉を抜きに今後のマーケティングを考えることはできないし、情報技術の発展は、むしろ人間的な関係を充実させるものと見た方が良いだろう。
マーケティングの最終の帰結である取引を考えてみると、もともと大変個性的で人間的なものであった。例えば、私が小学生の低学年の頃、よく行った駄菓子屋さんのおばちゃんは、私が行くとニコニコしながら「マーボー、よく来たねー。(私は幼い頃このように呼ばれていた。)今日は何が欲しいの。」と受け答えしてくれた。そして、私が引っ越しすると伝えた日には、涙ぐみながら、景品を記念に包んでくれ別れを惜しんでくれた。
このように毎日顔を会わせていると、私と私の友人、あるいは家族が誰で、どんな話題で私が喜ぶのかまで知っていた。主婦の方でも、例えば「魚屋」の大将と親しくなって生きのいい魚を、回してくれた経験をもっておられることでしょう。
このように、本来取引は非常に人間的であったが、人の行動範囲が広がり、不特定多数と取り引きするマスマーケティングが主流を占めるようになると、水臭い関係へと移行して行ったのである。つまり、市場の拡大と、人間的な取引は二律背反する関係になってしまったのである。
ところが、情報技術が発展し、情報化が進むようになると、人間的で、個性的な関係が再構築できるようになってくる。例えばシティーバンクで、口座を開設し、顧客番号を打ち込んだ後にカスタマーサポートへ電話をつなぐと、「ありがとうございます。川端様。」とオペレーターがでてくる。さらに私の取引履歴も、おそらく瞬時にオペレーターの画面に表示され、この人と取引を指定たかのように、いつでもどこでも個性化された受け答えをしてくれる。
現在、マーケティングを行う上で、重要なキーワードは「ワン・テュー・ワン・マーケティング」と「リレーションシップ・マーケティング」である。つまり、一対多の没個性的なマスマーケティングではなく、一対一でかつ相手の事をよく理解した上で、取り引きするあの駄菓子屋のおばちゃんのマーケティングである。
顧客は、誰かということを知られたくないという一方で、一対一の状況で「わたしは、あなたの事はよく知っていますよ。そして、あなたの好みはこれではないでしょうか。」という、特別な対応を望んでいるのである。
いままでの、市場の拡大と「ワン・テュー・ワン・マーケティング」や「リレーションシップ・マーケティング」という二律背反する関係を同時に実現できる手段が、ここで言う情報化である。コンピューター・ネットワークとデータベースを駆使することによって、そのことが可能となったのである。おそらく、金融ビッグバンに代表される、先進国のサービス業化の進展の中で、次の覇者となるのは、このことを理解している企業であることは間違いないだろうと思う。
しかし、そこまでは所詮、機械がやってくれるものであり、ここまでくると、ほとんどの人が身につけなければいけない能力は、コンサルティング・セールス(提案型営業)ができる、あの駄菓子やのおばちゃん的能力なのかも知れない。

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2003/09/17

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