税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

vol.19「新経営者の仕事」

私は、経営者の方々から「弊社はこのような現状だが、どのように対応すればよいのだろう?」と意見を求められたれり、「今後、弊社はこういう方針で行こうと考えていますが、どう思われますか?」と質問を受けることがよくあります。方向性や経営課題が漠然としている場合はもちろんのこと、それらが明確で、自ら意志決定を既にしているにも関わらず、確認という意味をこめて質問を受けます。その時には、その意志決定に至った前提条件を質問しながら、妥当性を確認していきますが、その度に「経営者は孤独である」と感じます。もちろん社外ブレーンを持つことを否定しているのではなく、むしろ持つべきであると思います。
問題は、その立場ゆえに社内に「良き理解者」「良き相談相手」がいないことです。
中小企業の場合、トップセールスマンが社長であるケースが多く、下が育っていないため、この傾向は高くなるように思います。幸運にも、創業時において、取締役として能力に優れたパートナーがいるか、あるいは大変優秀な社員が、その後取締役に就任する以外、社内に優秀なブレーンがいないところがほとんどです。
つまり、会社にとって大変重要な人材を「幸運」にたより、育っていないというより、トップ自ら育成していないのです。育成するには、「機会と権限」を与えることと、「失敗を許容する度量の大きさ」と、社長自ら「教育すること」が必要になってきます。ところがトップは、その優秀さゆえに、「任し切る」前に自分でやってしまい、頭の中では解っていながら「機会と権限」を奪ってしまうのです。そこには、潜在的に「失敗」に対する恐怖感が働いているように思います。もちろんその人物の「能力」に対する見極めは重要になってきますが、これはと思う人物には「失敗は成長のためのコスト」と割り切る必要があります。しかしそれだけでは十分でなく、次に教育をする事が必要です。教育はとかくオンザジョブトレーニングに頼りがちですが、それだけではなく経営に対する「考え方」を教える必要があると思います。
つまり、経営に関する「スキル」を叩き込まなくてはなりません。マーケットニーズの捉え方、商品サービスの開発、マーケティングの方法など、これらは多岐にわたります。「そんなこと大変だ!やってる暇などない。」とお叱りを受けそうですが、苦労して一度身に付ければ、以後いろんな場面に出くわしたときに、自分で考え自律的に解決してくれます。そのためには、単純なことですが、経営者は経営者としての仕事に時間を割くことです。今までやり慣れた、日常業務から自分を開放し、経営者として必要な「スキル」を習得する為の時間をつくることです。そして、これにより結果的に「権限と機会」を与え、「失敗を許容」し「教育」する為のスキルを身に付けることができるのです。
経営者としての資質を推し量る材料の一つに「自他ともに認める優秀な人材を育てたか」が挙げられるのもうなずけます。経営者は「孤高」であっても「孤独」であってはならないと思います。

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2003/09/17

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