あたらしい戦略の教科書
ホームページをリニューアルしようとあれこれ考えているうちに、1年が過ぎようとしてます。(ながっ!)
色々な会計事務所のホームページを見て、当社は何を打ち出そうかと考えているのですが、どうも「セリングドキュメント」な感じの「当社はこんなことができます。あんなことができます!」的になってしまいがちで、少々行き詰ってました。
そんなことを考えているときに「あたらしい戦略の教科書」(酒井穣著)という本に出会いました。
酒井 穣 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
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中小企業の場合は、戦略なんてなくても「社長の馬力」でなんとかなるもので、戦略本をいくら読んでも、あまり大した結果はでないと感じてました。(だから中小企業のままなのかも知れませんが。)
ところがこの本は「あたらしい」と銘打ってあるように、私には「あたらしい気づき」がありました。
この本のコンセプトは、筆者の言葉を借りて言うと「戦略の実行という現場の観点から"逆算"して構築された戦略の実務書」であるということです。
つまり戦略は、実行されてなんぼのもんなわけで、そこには実行する「他人」の情緒を理解しておく必要があるという著者の哲学が底流に流れているように感じられました。
読み進むにつれ「人情の機微を知ることは、人生で一番大事なことである。」という松下幸之助の言葉が、思い起こされました。
スイートスポットとは「顧客が求めるものに対して、競合にはできない、自社だけが提供できる価値」のことを言います。
このスイートスポットをいかにして構築するかのために情報収集がなされないといけない、としています。
そして、戦略の立案を密室で行うことは、犯してはならない「現代社会のタブー」とし、関係者を巻き込み「シェアー」しなければならないと書かれています。
また、同時に「戦略を育てる」という視点も見逃せません。(いいですね。育てるって言い回し)
つまり、種となる戦略は、喫茶店の紙ナプキンに、借りたボールペンで走り書きしたものからスタートし、実行の中で新たに見つかった情報をフィードバックしながら頻繁に修正され、巨大化してくる。と指摘し「究極的には、戦略とは、コミュニケーションを活性化させるための道具である」としています。
頭脳と筋肉が分離し、笛吹けど踊らずという、ありがちな現象を、組織に求めるのではなく、そこに働く人間に求め、実行される戦略を育てるという点で、あたらしい視座を提供してくれる良書です。
ホームページのリニューアルに悪戦苦闘していることを書こうと思っていたのが、いつのまにか「あたらしい戦略の教科書」の書評になってしまいました。
人情の機微を知り、現場とともに実行される戦略を育てようと、密に決意した次第です。
2010/10/15
- 雑感