国家の「勘定」と国民の「感情」
2014年今年の漢字が「税」に決まりました。
「税」と聞くと、重苦しい雰囲気がしますね。
私なりに、この漢字が選ばれた背景について考えてみたのですが、国家の「勘定」が合わなくなってきたから、増税するというのは理屈としては理解できるが、それと国民の「感情」との間に、どうもしっくりいかない点があるからじゃないかと思います。
とは言うものの、1億人の国民の「感情」を一括りに語ることはできません。国民と言っても、富裕層もいれば、貧困層もいます。資本家もいれば、労働者もいるし、若者もいれば、高齢者もいるわけで、それぞれが自分の置かれた状況から「税」について物申すので、国民感情と言っても千差万別です。
しかし国民と言うものを、敢えて大きなくくりで分けると、「税金を払う人」と「税金をもらう人」に大別されます。
日本の税収は40兆円で、支出は100兆円、借金は1,000兆円ですから、このままですと、確実に国家財政は破たんします。
そして、その破綻のトリガーは、複数の格付け機関の日本国債の評価引下げによるところが、最も可能性が高いと思いますが、ルーブルの暴落に伴って、ロシアの金利が急上昇したように、ある日、突然起こると思います。
これは、ほとんど、物理現象に近いものですから、どうしようもないと思います。
ですから、破たんを回避するためには、できるだけ早いうちに、処方するしかないわけですが、方法としては、大胆に支出を抑えるか、収入を増やすしかないわけです。
高齢化に伴って、「税金をもらう人」の比率が高くなってきているので、その人たちの票が欲しい政治家の方々は、社会保障費の削減などに、なかなか切り込めないのですが、「丁寧」に説明して早急に支出の削減を行うことが、絶対に必要になります。
一方、税収を上げるには、法人税や所得税などの直接税を上げる方法もあるわけですが、これですと、企業活動や、勤労意欲を削いでしまい「金の卵を産むガチョウ」の首を絞めてしまうことになりますから、これは避けた方がいいように思います。
とすると、「税金を払う人」のすそ野を広げる消費税の増税が、最も即効性があるわけです。
ただ、これによって、最も大きな影響を受けるのは、低所得者層や、年金受給者にくるわけですが、逆進性を緩和するために、現金を配るなどで納得をしてもらうことは必要になります。(軽減税率の導入は、反対です!)
加えて、財政破綻が顕在化すると、ハイパーインフレが起こり、年金受給者の方々にとっては、最も悲惨な結果になるわけですから、そういうところを丁寧に説明すれば、協力してもらえると思うのです。
皆にとってプラスになるような財政政策や経済政策は、将来世代にツケを回す方法以外ないわけですが、もはや、日本の国家財政は破たん寸前にあるわけですから、そんなことは、許されるはずありません。
ですから、富める者も、貧しいものも、若者も高齢者も、資本家も労働者も、もちろん政治家も、みんなにマイナスという我慢を分かち合ってもらうことなしに、日本の財政の「勘定」はあわないのです。
我慢にも限界がありますが、我慢の先にある輝かしい未来が、アベノミクスの3本目の矢で実現されるなら、国民の「感情」も大いに盛り上がると思います。
今回の選挙の結果で、そのことを付託されたのだという確かな認識が、安部政権に存在することを祈るばかりです。
アイネックス税理士法人 代表社員 川端 雅彦
2014/12/22