税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

自分の頭で考えるということ

 11月7日に行われた兵庫県知事選挙で、兵庫県議会から不信任を受け失職した斎藤元兵庫県知事が、出直し選挙で劇的な勝利を収めました。

ことの発端は、公益通報制度を利用して告発した内容が事実無根であると主張し、かつ、告発者の特定に動いた斎藤元知事の行動が批判され、同時に兵庫県民局長が自殺したのは、斎藤知事のパワハラによるものだと大手メディアの大合唱により知事が失職したことによります。

ところが、出直し選挙において、NHKの立花氏が、こういった一連の情報は、斎藤知事の改革に反対する反対勢力が仕組んだ、嘘っぱちであるということをSNSで出し抜き、それを閲覧した有権者が斎藤元知事を支持し、再び新知事に返り咲かせました。

当初から、大手メディアの論調に懐疑的であった私は、斎藤知事のことを「気の毒だなあ」と思いながら眺めていました。

ここで大事なことは「何が事実なのか?」ということを見極め、自身の判断の根拠とすることだと思います。

権威があるだろうと思っている人(ここでは大手メディア)の報道を自身の判断のよりどころにすべきではなく「事実は何か?」を確認することを、判断するために初めの第一歩とすべきなのです。

また、人間は、自分が「こうだろう。こうに違いない。」という自身の先入観をより強固にする情報を集める傾向があります。

ここでは大手メディアの情報だから間違いない、斎藤知事はけしからん男だ、という世論が形成され、「おねだり」や「パワハラ」といった追加情報が、先入観を強化する材料に使われました。

本来は、そうではなく、物事の根拠や前提を批判的な視点から疑い、問題の本質を深く考えるクリティカルな思考(批判的な思考)がベースであるべきなのです。

これらは、企業を経営する立場からも非常に重要な示唆を与えてくれます。企業経営者が、各事業部や部門に、経営資源を配分する場合、売上のみならず、各部門の限界利益、経常利益、あるいは一人当たり生産性などの客観的で「見える化」されたデータから判断すべきなのです。

そういう意味で、セグメント別の正しい損益を把握することが大変重要であり、そこから初めて、So What?(だからどうなの?)という議論を深めることが重要となります。

経験や直感、あるいは他人の意見から答えを導き出す前に、客観的な事実を追い求め、それを基に意思決定をするという思考回路を持つことがビジネスパーソンにとっては、必須アイテムの一つだと思うのです。

会計を「見える化」して企業を強くするという我々のパーパスを、もう一度振り返る機会を与えてくれた出来事でした。



令和6年12月

アイネックス税理士法人

代表 川端雅彦

京都・大阪の税理士ならアイネックス税理士法人

2024/12/06

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