新たなフェーズに突入した最低賃金の引き上げは、企業変革を促す好機!
政府は、2030年代半ばまでに最低賃金1500円を目標とすることを示しました。現在の最低賃金は都市部では1100円前後なので、4割近く引き上げられることになります。
今後の10年で4割ですから、年間4%ずつ上昇することになり、企業は10年後、時給1500円を支払ってでも成り立ちうるビジネスモデルへ、業態を変革することを余儀なくされるということになります。
インフレに乗じて、毎年単純に、価格を引き上げることができるビジネスなら何とかしのげるかもしれませんが、そうでない場合、かなり苦戦を強いられることになる可能性があります。
そうすると毎度のことで恐縮ですが、従業員一人当たりの労働生産性を引き上げるか、あらたな価値を創造し、付加価値を上げることが必要になってきます。
付加価値を上げる新たなものを作るには、それなりの創造性が必要となりますが、ちょっとした視点を変えることで、大いなる成長を実現することも可能となります。
語り継がれている事例で恐縮ですが、スターバックスの成功は参考になります。(以下HBRより)
「スターバックスは、多くの家でただ同然で出されている飲み物に、3ドル以上の値段をつけた。スターバックスでは、これまで何百万杯というコーヒーが飲まれたが、顧客がこのプレミアム価格を支払ったのは、言うまでもなく、その顧客の多くが経済的に豊かだったわけでも、またことのほか品質が高かったからでもない。むしろ、暮らしのなかでコーヒー・ブレイクがいかに大切なものか、人々にあらためて考えさせるプライス・ポイントをあえて設定したからである。」
このように、コーヒーを飲むというありきたりの習慣を、大切なコーヒー・ブレイクというひとときに、絶妙な価格設定で「場」を提供して新たな価値を創造し、大成功を収めたわけです。
一方で、提供している価値に対して、価格がかなり割引されているケースでは、その価値にきづかせることができれば、価格を引き上げ利益体質を再構築するということが可能となります。
そもそも、自社の製品やサービスの品質を裏打ちしている「卓越した技術や技術を支える職人」「仕入れルート」や「アフターサービスの機動力」などを「見える化」してアピールできていないが故に、割安に放置されている場合は、価格を価値に近づけるチャンスが眠っていると思います。
その他、色々な方法が考えられますが、「価格ではなく、価値で勝負する」というマインドを浸透させることが、こういった方法を発見し、値決めにおけるタフさを養う上で大切なことだと思います。
合わせて、値決めにおいて「御社が言うなら仕方ないなぁ」と思っていただける「尊敬される組織、会社」になることが、見えない価格競争力の源泉となると思います。
最低賃金の引き上げは、企業体質を変革する機会であると前向きに考えることが大切と考えます。
令和6年10月
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2024/10/09
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