金利が動く世界に対する準備
7月の金融政策決定会合で、日銀は追加利上げを決断しました。日米金利差縮小と、アメリカの景気後退懸念が相まって、急激に円高が進み、それに共振して日経平均が4,400円ほど暴落し、ブラックマンデーを超える超大幅安となりました。
この原稿を書いている8月6日時点で3,000円近くリバウンドしているものの、投資家にとって冷や水を浴びせられる格好となりました。
この時期における日銀の決断が、妥当であったかどうかは、後ほど評価されることになると思いますが、少なくとも市場原理による「金利が動く世界」と、国も企業も家庭も向き合わなくてはならない時代が復活したことになります。
いままで、ほとんど気にすることのなかった金利を意識して、資金を調達、運用する必要が生じたわけです。
預金者にとっては、金利収入が増えることとなり、それなりにメリットがあります。
一方、借入している企業は、金融機関から見た信用格付けを改善しながら、金融機関と条件面において、その姿勢を確認しておく必要があります。
その際、今後の設備投資や出店計画の方針を立て返済計画と睨み合わせながら、できるだけ早い内に交渉を開始し、金融機関とのコミュニケーションを密にする必要があると思われます。
同時に、金利が動く世界が常態化すると、じゃぶじゃぶのお金で生きながらえてきたゾンビ企業が、金利負担に耐えられなくなり市場から退出する事態が想定されることになります。
このことは、生産性の低いゾンビ企業から労働力が解き放たれ、生産性の高い企業に労働力が移動するというメカニズムが働くことになります。このことによって、一時的には痛みを伴うものの、日本全体としては健全な方向に向かうことになります。
こういう事態を追い風にするためには、繰り返しになりますが、生産性を高め、金利負担を吸収し、さらなる労働力を獲得することができる企業体質をつくることが必要になってきます。
生産性を高めることは、属する全社員が成長することに比例するということですから、全社員を巻き込んだ活動であるといえます。
金利が動く世界の出現を追い風とする企業努力が欠かせない時代が到来しつつあります。
令和6年8月
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2024/08/07
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