プラチナ企業を目指す!
岸田文雄首相は28日、2024年度予算の成立を受けて記者会見し「25年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させる」と表明しました。
それを踏まえて、各企業に賃上げを促す要請を行っていますが、民間が決定する重要な意思決定に政府が介入するということは甚だ疑問が残ります。民間にそういうことを要請する前に、労使合わせて30%にも及ぶ社会保険料を引き下げることの方が、よほど直接的で実質手取りを増やすことができる「政府でしかできない施策」だと思います。
実際、中小企業の労働分配率23年10~12期において、前年同月比1.7%増加しています。これに比べて大企業のそれは、3.2%減少し、37.7%となっています。
これは、各中小企業は「収益を犠牲」にして賃上げをせざるを得ないという状況を物語っており、先ほどの社会保険料の引き下げのほうが、中小企業の収益を犠牲にすることなく「実質手取り額」を増やす効果的な処方箋になると思われます。
しかしながら、賃金上昇をはじめとする中小企業を取り巻く経営環境は、そう簡単には変わらないので、生産性を上げることにより付加価値を上げ、賃金を引き上げる努力をすることは、競争を勝ち抜くうえでやらなければならない重要なテーマです。
この際、社員を鼓舞し、モーレツに働くことにより乗りきる方法は「働き方改革」の足かせがあるので、全体重を乗せきることはできません。
かといって、ワークライフバランスを重視し、働きやすい経営環境を提供する「ホワイト企業」であれば生産性が上がるかというとそういうことでもありません。
この点について、働きがい・働きやすさを両立する「プラチナ企業」が売上高伸び率、PBRが最も高いという調査結果が出ています。(日経新聞4月3日下図参照)
また、ここでは、ホワイト・モーレツ・プラチナ企業を以下のように定義しています。
中小企業においては、ホワイト企業のような条件を実現するのは、余程の収益性の高いビジネスモデルを既に確立していないと難しいと思います。
かと言って、モーレツに働くことのみを要求される環境ですと、残業時間が長くなり、定着率が下がりノウハウが継承されず、採用に明け暮れるという事態を招いてしまいます。
したがって、「魅力的で具体的」な経営目標を掲げ、社員を鼓舞し、帰属意識を高めることが大切となります。
そして、柔軟に働ける制度を設けることにより、主婦の方や高齢者でも働ける環境を作ることがプラチナ企業へ脱皮するための必要条件だと思います。
弊社においても、子育てや介護に手を取られるので、正社員のように残業ができない方々向けに時短社員制度を導入したところ、たくさんの優秀な主婦の方々の採用に至っています。
同時に、リモートで仕事ができる環境を作り、業務に支障をきたさない限りにおいて、週二日以上出勤制度を導入することにより、柔軟な働き方を提供し、定着率が向上するという副次的効果も享受できています。
働きがいを感じている社員は、そうでない社員より「生産性」が高いことは、すでに証明されています。
そして、「成長とは生産性が上がること」であるという大原則から導き出されることは、働きがいを感じることができる社員は、成長を伴うということです。
社員一人一人の生産性を上げることが、プラチナ企業を実現する中小企業が取り組むべき初めの第一歩だと思います。
令和6年4月2日
アイネックス税理士法人
代表 川端雅彦
2024/04/05
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