人事評価の目指すところ
人事担当者はじめ部下を評価する人たちの頭を悩ます、年末の人事評価の季節が近づいてきました。
一方で、評価される側は「人事評価制度に満足していますか」という問いに対して、「満足」もしくは「どちらかというと満足」と回答しているのは約38%、「不満」「どちらかというと不満」との回答が62%という調査結果(2022年アデコによる)が出ています。
人事評価は、データあるいは事実に基づいて評価すべきでありますが、そういったものが実際のところなかなか把握することができず、上司の感覚でなされているところが多いのが、こういった不満の一因であると想定されます。
人事評価の目的は、社員の「成長」をうながし「やる気」を引き出すことですが、かえって「不満」を募らせてしまっているという残念な結果になってしまっています。
営業などは、比較的成果を売上や粗利で推し量ることができます。製造もその責任者は、その部門の成果をデータで把握することは可能ですが、製造部の一人一人の成果を評価するためのデータはなかなかうまく把握できないと思われます。
また、成果がデータなどで見えるもの以外に、成果としては見えづらいもの、例えば、同僚の仕事がはかどるように支援している人や、問題を未然に防ぐ方法を知っている人の成果は、客観的に把握することが困難です。
あるいは、社内の人たちに、自分が体験して積み上げてきたノウハウを体系化し、知識資産として社内に浸透させている人の評価なども同様です。
このように成果として見えづらいが、成果を出すために大切なことを評価することが大切になってきます。したがって、こう言った成果としては測定困難だが、成果を出すには大切な行動や働きかけを明らかにすることが、最低限必要になります。
また、このような、だれかが困ったときに頼りになる同僚や、優れたノウハウの浸透により会社に貢献したと考えられる人の評価は、360度評価(さまざまな立場の関係者が従業員の執務態度や業務遂行行動を評価する手法)などにより補うことが必要となってきます。
同時に、人事評価の目的は、人を成長させることにあるわけですから、過去において何をしてきたかを評価するだけでなく、未来において何をして成果を出すかの「約束」を取り付ける場でもあります。この約束は「リスキリング」を促すものでもあると言えます。
そして、何より重要なことは、人を評価するということは、評価する人の待遇と昇進に影響し、その人の成長を促し、企業の生産性を向上させるためにあるのだということを、その評価する側が自覚することです。
この自覚ができたなら、評価する側は、社員が一生懸命作成した自己評価資料を斜め読みすることなく、真剣に評価面談に臨むことになるはずです。
令和5年11月3日
アイネックス税理士法人 代表 川端雅彦
2023/11/07
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