税理士川端雅彦コラム

KAWABATA MASAHIKO COLUMN

大経営者 稲盛和夫氏を偲んで

昭和の大経営者である松下幸之助、森田昭夫、本田宗一郎らと並ぶ京セラ創業者の稲盛和夫氏が、去る8月24日、90歳でご逝去されました。

ここに謹んでお悔やみ申し上げます。

私は、稲盛和夫さんが主宰されていた「盛和塾」に籍を置き、盛和塾京都の代表世話人をさせていただいたこともあり、大変多くのことを学ぶ機会に恵まれました。

私が学んだことの大きなものの一つに、京セラの理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という考え方があります。

わが社の理念の「わが社で働く人たちが人間的に成長し、経済的に豊かになること」という表現になっているのは、京セラの理念に多分に影響されています。

会社には様々なステークホルダーがいますが、その中でも、最優先すべきは、自社に属する「全従業員の物心両面の幸福」であり、そのためには「利他心」が何より大切であると説かれています。

話は変わりますが、成功すると幸福になるのか、幸福になると成功するのかということを科学的に研究した「ポジティブ心理学」というものがあります。

この研究によると、幸せは「成功に先行する」のであり、単なる「成功の結果」ではなく、幸福感や楽観主義は、実際に業績を高め優れた成果をもたらすのだそうです。つまり、幸福感そのものが競争力の源泉であり、これを「ハピネスアドバンテージ(幸福優位性)」と表現しています。

稲盛さんが、「全従業員の物心両面の幸福の追求」をその理念の冒頭に謳われているのは、成功するための本質を鋭く見抜いておられたからなのではないかと思います。

同時に、稲盛さんは、そういう幸福を実現するためには、「高収益体質でなければならない」と言及されています。

売上高対経常利益率が、1%や2%では、待遇改善も将来の利益を生み出す先行投資もできず、「あなたの経営者としての値打ちはそんなもんなのですか。従業員のために手を胸に当ててよく考えなさい」と激を飛ばされていたことを記憶しています。

そして、この高収益体質を実現するための手段の一つが「アメーバ経営」であります。

簡単に言うと「部門別採算性を見える化」するということです。これら、見える化された部門別採算表を共有しながら、値決めを吟味し、売上最大・経費最小を実現していくということを実践していくことになるわけです。

私どもの経験でも、この「部門別採算性を見える化」することにより、各部門における採算意識が芽生え、収益が改善するということが多々見受けられています。

「会計がわからんで経営がわかるか!」という名言がありますが、その会計を「意思決定に足る情報」として提供することが、我々会計人の使命であると、身の引き締まる思いをしたことを覚えています。

京セラの創業に始まり、巨大なNTTや、すでにインフラを持っている新電電などの競合ひしめく中で、通信業界に参入した第二電電(現在のKDDI)の設立と成功、そして、最後には「沈まぬ太陽」として映画化された、日の丸体質から抜けきれないJALの見事な再建など、その功績は日本経済に大きな足跡を残されたと思います。

昭和の怪物ともいえる大経営者とお別れすることは、大変悲しい思いがしますが、盛和塾の門下生として「経営とは強い意志で決まる」という稲盛和夫塾長の名言を胸に抱いて、邁進していこうと思います。

長い間、ありがとうございました!本当にたくさんのことを学ばせていただきました。

稲盛和夫塾長のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。


令和4年9月5日

アイネックス税理士法人

代表 川端雅彦

京都・大阪の税理士ならアイネックス税理士法人

2022/09/06

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