人件費増と103万円の壁
クロネコヤマトが10月1日より、値上げに踏み切りました。背景には、深刻な人手不足があります。
人材を確保するためには、人件費をアップさせることを含む待遇を改善する必要があるわけですが、利用者にとってはコスト増となることから、痛手となります。
しかし、これはマイナスの面だけでなく、かなりのプラスの効果もあると思います。
これにより、そこで働く人たちの賃金が上昇することになれば、より一層消費が活発化することになり、日本経済とってよいこととなるでしょう。
そして、他の同業者、もっと言えば他業界においても、人件費増を吸収するために適正な価格に改定してくという流れを作ることができれば、物価も上昇することになり、黒田総裁の目指すデフレ脱却にも一役買うことになるわけです。
ところが、価格改定により人件費増を吸収できたとしても、やっかいなことも生じてきます。
例えば、パートの方の時給が上がると、配偶者控除が受けられる103万円という「年収の壁」に届きやすくなり、働く時間を減らす人が増えてくるという状況がおこってきています。
厚生労働省の統計によると、卸売・小売で働く人のパート社員の時給の平均は、2017年では1020円から1080円で推移していますが、これは2年前に比べ4%ほど上昇しています。
一方で、17年平均の月間労働時間は92時間で2年前から3%減っているそうです。
社会を活性化するためのインセンティブをつけることが、税制のあるべき姿のはずであるのに、現実には103万円という壁が、勤労意欲を削ぐというブレーキをかけることになってしまっています。
私どものクライアントでも、労働力確保が追いつかないので、お店の休日を増やした飲食店もあります。
労働力不足を解消するための生産性改善は、企業にとって最も優先度の高い取組ではありますが、経済活動に対して、逆インセンティブになるような税制は、早く見直してもらいたいものです。
アイネックス税理士法人
代表社員 川端 雅彦
2017/11/24
- 経営について