『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』
本日ご紹介させて頂く本は、東京ケーススタディ研究会の『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』です。
【著者】東大ケーススタディ研究会 【発行所】東洋経済新報社 【第1刷】2009年10月1日 【第19刷】2018年12月11日 |
「フェルミ推定」とは、「日本全国の牛の数」「長野県のそば屋の数」など、直感では見当のつかないような荒唐無稽な数量を、知っている知識だけをもとに、合理的な仮定とロジックを駆使して、短時間で概算する方法を指します。
フェルミ推定は科学者の思考訓練ツールとして有効であると認められたことから、欧米の学校では理科系の教材として広く利用されており、現在ではコンサルティング会社や外資系企業での面接試験、そして一般のビジネスパーソン向けの教育ツールにも利用されるようになってきています。
フェルミ推定は、基本的に5つのステップで進めていきます。
①前提確認
例えば「鞄」をどのように定義するのか(定義)、どのような「鞄」を数えるのか(範囲の限定)を決めます。
一言で「鞄」といっても、ボストンバッグのように大きなものから、ポーチのように「鞄」といえるのかどうかわからないものなので、その種類は多様です。
そこであとから何を数えているのか混乱が生じないよう、まず定義と範囲の限定を行います。
②アプローチ設定
基本的な式を設定します。
「日本に鞄はいくつあるか」という問題に対しては、以下の式になります。
日本における鞄の数=日本の人口×鞄の平均所有数
③モデル化
上記②の式の日本の人口と鞄の平均所有数を縦に分解します。
[A] 日本の人口 × [B] 鞄の平均所有数
↓
[A] 男女×各世代(0~80歳) × [B] それぞれのセグメントの鞄の平均所有数
これによりそれぞれのセグメントの鞄の平均所有数に関する具体的なイメージをすることができます。
④計算実行
上記②アプローチ設定と③モデル化を経て、精緻な式を作り、計算実行に移ります。
⑤現実性検証
これまでのステップで自分が設定した計算式の正しさや数の正確さをチェックします。
本書は職業・年齢を問わず「地頭力」を鍛えたいと思っている全ての方が、楽しみながらフェルミ推定を解くためにオススメですので、ご一読頂ければと思います。
以下に参考例題を掲載致しますので、是非挑戦してみて下さい。
例題:日本に宅配ピザの店舗はいくつあるか?
<解答例> ①前提確認 宅配ピザの店舗は、一定時間内に宅配バイクで到達できるエリアあたりに1店あると考えられます。
②アプローチ設定 日本における宅配ピザの店舗数は、「日本の面積÷1店舗あたりの面積」で求められます。
③モデル化 ・日本の面積 日本の面積約38万㎢を山地と平地に分け、3/4を山地、1/4を平地とし、更に平地のうち無人地域が1/3、有人地域が2/3を占めると仮定します。 以上より、田舎・市街地の面積は、それぞれ19万㎢、9.5万㎢となります。 ・1店舗あたりの面積 田舎において、時速30kmのバイクで30分以内に着ける範囲に宅配ピザが1店あるとすると、「15km×15km×π≒700㎢」となります。 市街地において、時速20kmのバイクで15分以内に着ける範囲に宅配ピザが2店あるとすると、「5km×5km×π≒75㎢」となります。
④計算実行 (19万㎢÷700㎢×1店舗)+(9.5万㎢÷75㎢×2店舗)≒2,800店舗
⑤現実性検証 宅配ピザ業界シェアのトップ3であるピザーラ(約530店)、ピザハット(約360店)、ドミノピザ(約180店)を足しても、宅配ピザ店は日本に1,000店ほどしかなく、試算は現実より多くなってしまいました。 これは現実には田舎の占める割合が比較的大きい地域には、宅配ピザの店舗がほとんどなく、商品のデリバリーというビジネスモデル上、一定以上の人口密度が出店条件になっていると推測できます。
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アイネックス税理士法人
2019/09/17
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