『続・怪談和尚の京都怪奇譚』
もう8月も終わってしまいますが、夏と言えば怪談話!
本日は『続・怪談和尚の京都怪奇譚』をご紹介したいと思います。
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【著者】三木 大雲 【発行所】株式会社 文藝春秋 【第1刷】2019年8月10日 |
著者の三木 氏は、京都にある日蓮宗の光照山 蓮久寺で第38代目の住職をされています。
京都にあるお寺の次男として生まれた為、引き継ぐお寺がなかったので、若い頃は全国のお寺で修業を積まれてきました。
縁あって現在の蓮久寺で住職として就任されましたが、今回はその就任されるきっかけとなったお話を要約してご紹介します。
<お題目菩薩さま> 話は蓮久寺の住職となる3年前に遡ります。
この頃、私の生活は大変困窮しておりました。 光熱費すら払えないような状況は、心さえ蝕み、この世には神や仏など存在しないのではないかとさえ思えてきます。 そんなある日、ある噂を耳にいたしました。 それは、一生に一度だけ希望を叶えてくださる、菩薩さまの像がおられるという噂です。
その菩薩さまは、京都府北部にあるお寺におられるそう。 今の生活から抜け出したいという思いから、そのお寺を訪ねることにしました。
お寺のご住職は、普段、京都市内で別のお寺の管理をされているので、許可を得て宿泊させて頂きました。 宿泊前に村の方々に挨拶へ伺った際、村の世話役の方から 「明日は丁度、お題目さまの縁日なので、朝早くから村人がお寺に行くかもしれませんが、ゆっくり寝ていて下さい。」 と言われました。
日蓮宗で読まれる『南無妙法蓮華経』のことを「お題目」と呼ぶことは存じていましたが、「さま」付けで呼ばれるのは初めて聞きました。 「お題目さまとは、誰のことですか」と聞くと、 「村人が勝手にそう呼んでいるだけです。一人につき、一生に一回だけ願い事を叶えてくれる菩薩さまで、明日はその年に一度だけの縁日なんです。」とのこと。 そこで、私も参加したいと申し出ました。 ですが、世話役の方から「手伝っていただくことはないです。」と言われ、菩薩像の詳細を教えて欲しいとお願いしても、村人以外には教えたくないと断られる始末。
しかし、ここで諦めては元の木阿弥です。 私の現在の困窮状態、住職になりたいという強い思いを伝えたところ、他の村人とも話し合った結果、 年に一度の縁日に、たまたま訪れられたのは、お題目さまとのご縁があったからに違いないと、 ご厚意で、どうにかお題目さまに会わせていただけることになりました。
実は、その村では、私が伺った年を最後にお題目さまへのお願いをやめようと決めておられたそうです。 なぜならば、昔から守っていた、“村のことをお願いしに行き、個人的なお願いはしない”という暗黙の了解が、近頃無くなっていたからだそうです。
縁日の日、私はお題目さまに「生まれ故郷の京都の町で、お寺の住職がしたい。」とお願いしました。
すると、そのすぐ後に不思議な夢を見たのです。 金色のお釈迦さまの仏像が出てこられて、「三十三歳まで頑張りなさい」と言って下さいました。
お題目さまにお願いした3年後、33歳のとき、私は蓮久寺の住職を務めさせていただくことになりました。
(参照:『続・怪談和尚の京都怪奇譚』56ページ~65ページ より)
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今回ご紹介したお話の他にも、たくさんの短編が収録されています。
三木 氏は、全国で怪談をされていて、「稲川淳二の怪談グランプリ」でも優勝された経験がある方なので、中には本当に怖いお話もありました。
しかし、ただ単に怖いだけでなく、説法も織り交ぜて書かれているので、日常の出来事に対して、大切なことや戒めなければならないことを諭されたような気がします。
ふと気付けば、あなたの後ろにこの本が…
という冗談は抜きにして、宜しければ一度読んでみていただきたい1冊です。
アイネックス税理士法人
石垣 貴子
2019/08/29
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