『プロフェッショナルの条件』
P.F.ドラッカーを知らないという人は数少ないのではないでしょうか。
2009年に岩崎 夏海 著『もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)』が話題となり、一躍ベストセラーになったことで知られる、あのドラッカーです。
今回は、ドラッカーの『マネジメント』でなく、『プロフェッショナルの条件 ―いかに成果をあげ、成長するか―』をご紹介させていただきたいと思います。
|
【著者】P.F.ドラッカー 【編訳】上田 惇生 【発行所】ダイヤモンド社 【第1刷】2000年6月29日 【第62刷】2013年2月20日 |
21世紀になり19年が過ぎようとしている今、歴史家は20世紀(1901年から2000年)を振り返って、最大の出来事は何だったと言うと思いますか。
科学技術の発達?
それとも第一次・第二次世界大戦?
はたまた通信・インターネットが普及したことによる情報の即時化・国際化?
ドラッカーの答えは≪人口革命≫です。
人口革命は、量的・質的に捉えることができます。
量的には、人口増加・高齢化・平均寿命の伸びが挙げられます。
質的には、労働力人口の中身が変化したこと。つまり、肉体労働者から知識労働者へ重心が移動したことが挙げられます。
知識労働者は、次の2つの理由で他の者と決定的に異なる存在です。
第一に、生産手段を所有している点。
生産手段とは、知識です。知識は携行品であり、どのような資源とも異なる性質です。
第二に、雇用主である企業・組織よりも長生きする点。
営利企業・非営利企業・政府機関のいかなる形態であれ、組織にとって競争力は「人が何を生み出せるのか、生み出させることができるのか」しかありません。
いわゆる生産資源(土地、労働、資本など)からは、競争優位を得ることはできません。
唯一、”意味のある競争力要因は「知識労働の生産性」である”とドラッカーは言います。
では、知識労働の生産性とは何なのか。
それは、「成果をあげること」です。
成果をあげるとはどういうことなのか。
それは、「なすべきことをなすこと」です。
「なすべきことをなす」と言うと簡単なように聞こえるかもしれません。
確かに、小さな成果であれば簡単です。
しかしながら、大きな成果をあげている者は驚くほど少ないのです。
大きな成果をあげられない者にも知力、想像力、知識はありますが、それらはあくまでも基礎的な資質にしかすぎません。
基礎的な資質を成果に結びつけるには、成果をあげるための能力が必要となります。
成果をあげるためにはどうすれば良いのでしょうか。
それは、「もっとも重要なことに集中すること」です。
成果をあげる人は、最も重要なことから始め、一度に一つのことしかしないのです。
どうして集中が必要なのでしょうか。
それは、貢献を行うための時間よりも、行わなければならない貢献の方が多いからです。
時間を分析すれば、成果をもたらす仕事に割ける時間はあまりに少ないことに気付けるでしょう。
何故ならば、一度に一つのことを行うことによってのみ、早く仕事ができるからです。
最後に、もっとも重要なこととは何なのでしょうか。
それは、劣後順位の決定です。即ち、取り組むべきでない仕事を決定しなければなりません。
優先順位と劣後順位に関して重要なことは分析ではなく勇気です。
勇気のために必要なのは次の4点です。
・過去ではなく未来を選ぶこと。
・問題ではなく機会に焦点を当てること。
・横並びでなく自らの方向性をもつこと。
・無難で容易なものではなく、変革をもたらすものに照準をあわせること。
「真に意味あることは何か」、「もっとも重要なことは何か」という観点から、時間と仕事について、自ら意思決定をする勇気があれば、もっとも重要なことを決めることができます。
もっとも重要なことさえ決まれば、あとは集中するだけです。
本書には、組織の中で働く上で重要なことが多く書かれております。
大変示唆に富んでいるため、このブログではお伝えしきれなかった部分もたくさんあります。
自己啓発のためにも、2度・3度と読み返すべき一冊であると感じました。
まずは今日から「もっとも重要なことに集中」するよう心掛ける所存です。
アイネックス税理士法人
税理士 伊藤 佑輔
2019/07/05
- 読書発表・本紹介