『会計の世界史』
ビジネスの共通語といわれている“簿記”の歴史をご存知ですか。
“簿記”の原理原則は世界共通の普遍的なものであり、また、この先も変わることのない不変的なものです。
しかし、“簿記”と並んでよく耳にする“会計”は、普遍的なものですが、不変的なものではありません。なぜならば、“会計”は国によっても異なるし、時代と共に変化していくものだからです。
冒頭から少し難しい話をしてしまいましたが、本日ご紹介する『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ―500年の物語』では、簿記・会計の15世紀から21世紀までの歴史を、経済的な発展との関係だけでなく、芸術的な要素も交えることで読み進めやすく描かれています。
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【著者】田中 靖浩 【発行所】日本経済新聞出版社 【1版1刷】2018年9月25日 【1版7刷】2019年4月18日 |
簿記の発祥の地はイタリアです。
イタリア・フィレンツェの西部にヴィンチ村という村がありました。
その村にセル・ピエロ・ダ・ヴィンチという一人の男がいました。
イタリア語でセル(ser)は、英語でいうとサー(sir)に相当し、公証人や法律家に付されるならわしがありました。
つまり、彼は「ヴィンチ村に住む公証人のピエロ」です。
ピエロには、婚外子がいました。
婚外子の名は、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
「モナ・リザ」や「最後の晩餐」で有名なルネサンス期を代表する芸術家です。
レオナルドは、「最後の晩餐」を描く際、遠近法を1冊の数学の本から学びました。
その本とは、ルカ・パチョーリ著『算術、幾何、比及び比例全書(Summa de arithmetica geometria. Proportioni, et proportionalita)』(以下、『Summa』)です。
『Summa』は1494年に出版された本で、600ページにも及ぶ大著です。
その中で、簿記については27ページにわたり説明されています。
600ページのうちのたった27ページですが、ビジネスの歴史を変えてしまうほどの衝撃的な内容でした。
また、難解なラテン語ではなく、読みやすいイタリア語で書かれていたこともあり、ベニスの商人の間で広まりました。
さらに、それまでは主にローマ数字が使用されていましたが、アラビア数字を取り入れたことで、人々は計算し、数字で考えることができるようになったのです。
『Summa』には両方の数字が使われていますが、帳簿の記入にはアラビア数字を使用することをルカ・パチョーリも勧めています。
ローマ数字で「Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ…」はアラビア数字で「1,2,3…」です。これくらいなら簡単ですよね。
でも、桁数が多くなると、複雑になります。例えば、「578」は「DLXXVIII」、「3462」は「MMMCDLXII」となります。
なるほど。確かにローマ数字で計算するのは難しすぎることがわかります。
この『Summa』が出版されたことにより、人々へ簿記が広まり、その後、銀行が登場し…と物語は続いていきます。
ここでは、ほんの最初の部分しかご紹介できませんでしたが、『会計の世界史』に興味を持たれた方は、是非一度手に取って読んでみて下さい。
アイネックス税理士法人
石垣 貴子
2019/06/13
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