中小企業白書を読む(赤築)
?今回は後継者への事業承継に関して、承継形態別の現状と課題を見ていきます。
第2-3-10図は、2008年から2012年までの現経営者の承継形態を規模別に示したものです。アンケートから、小規模事業者では親族への承継が6割強であるのに対し、中規模企業では4割強にとどまっており、第三者を含めた親族以外による承継が親族への承継を上回る結果となっています。
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次に親族以外への事業承継が多い中規模企業について、後継者の選定理由を見ていきます。第2-3-11図は、親族を後継者とした理由と親族以外を後継者とした理由について、共通あるいは反対の関係にある項目をまとめたものです。
アンケート結果から、親族以外を選定する理由としては「役員・従業員の士気向上が期待できる」、「役員・従業員の理解を得やすい」といった役員・従業員との関係に関連した項目が多く挙がっていることが分かります。
これに対し、親族を選択する理由としては、「血縁者に継がせたい」という項目に加えて、自社株式・借入金の個人保証の引き継ぎや、金融機関との関係維持といった財産承継・企業財務に関連した項目が多く挙げられています。
最後に、親族による承継と親族以外による承継について、それぞれに考えられる問題点について見ていきます。
第2-3-12図より、親族に事業を引き継ぐ際には、中規模企業の7割強、小規模企業の6割強が、問題になりそうなことがあると答えています。具体的には、「経営者としての資質・能力の不足」といった後継者の経営者としての適正を問題とする企業が約6割に上っており、また「相続税・贈与税の負担」を問題とする企業も約4割となっています。
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これに対し親族以外に事業を引き継ぐ際には、6割強の企業が問題になりそうなことがあると答えています。具体的な問題としては、借入金の個人保証の引き継ぎや、自社株式・事業用資産の買い取りといった項目が多く挙げられています。
この中でも特に問題となるのが借入金の個人保証の引継ぎです。第2-3-14図より、事業規模の大きさにかかわらず、親族以外に事業を承継する企業の3割強が借入金の個人保証の引継ぎを問題になると考えており、親族外承継の大きな課題になっているといえるでしょう。
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また多くの企業で問題と考えられている自社株式に関する相続税、贈与税については、納税猶予が認められる「事業承継税制」について適用要件の見直しが行われる等、制度の大幅な改善が図られています。(平成27年1月1日以後適用)
2014/01/16