顧客起点の経営
今回、私が紹介する書籍は西口 一希著の「顧客起点の経営」です。
著者の西口 一希氏は大阪大学経済学部後、P&Gジャパンに入社。マーケティング本部に所属、ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任し、パンパース、パンテーン、プリングルズ、ヴィダルサスーン等を担当。 2006年ロート製薬に入社、執行役員マーケティング本部長としてスキンケア商品の肌ラボを日本一の販売数量の化粧水に育成、男性用ボディケアブランドのデ・オウを開発、発売し1年で男性用全身洗浄料市場でNo.1に育成するなど、スキンケア、医薬品、目薬など60以上のブランドを担当。2015年ロクシタンジャポン代表取締役。2016年にロクシタングループ過去最高利益達成に貢献し、アジア人初のグローバル エグゼクティブ コミッティ メンバーに選出、その後ロクシタン社外取締役 戦略顧問。 2017年にスマートニュースに参画。2019年現在スマートニュース 日本および米国のマーケティング担当 執行役員として、ユニコーン企業となるまでの急成長に貢献。されている方です。
『顧客起点の経営への3つのフレームワーク』
1.顧客起点の経営構造
上から順に、経営対象、顧客心理、顧客行動、財務結果の4つのブロックで成り立っている。どのような事業においても、経営活動は顧客の心理状態に影響を与え、その顧客の購買行動を変え、売上や利益という財務結果へと導く。
1)経営対象
①新規顧客の獲得
②既存顧客の維持・育成
③上記を支えるすべての組織活動
2)顧客心理
①顧客(WHO)
②プロダクトの便益と独自性(WHAT)に価値を見出し
③購買意向を形成する
3)顧客行動(顧客数 × 単価 × 頻度)
①顧客数の増減
②新規、流出、復帰
③購買対象、単価、頻度
4)財務結果(売上 – 費用 = 利益)
顧客起点の経営構造のフレームワークを共有し、今行なっている会議や議論が、顧客の何に影響することを目的にしているのか確認することで、意味のない議論を避け、顧客起点の意識を共有できる。
2.顧客戦略(WHO&WHAT)
誰に(WHO)、何を(WHAT)提供すれば価値が生まれるのかを明確化し、施策に落とし込んでいく。商品やサービスであるプロダクト自体には「価値」はない。プロダクトが提案する便益と独自性を、自分自身にとって価値があると顧客が認識して初めて「価値」が生まれる。
顧客戦略は、自社プロダクトが提供する便益と独自性に、顧客が「価値」を見いだす組み合わせである。
①便益あり×独自性あり:価値
②便益あり×独自性なし:コモディティ
③便益なし×独自性あり:ギミック
④便益なし×独自性なし:資源破壊
目指すべきは顧客にとって便益と利便性がともに強い、すなわち「価値」が成立することである。高い「価値」を認めた顧客から、徐々に潜在的な多くの顧客へと認知が拡大するため、売るための投資負担へ少なくなる。
顧客戦略の目的は、高い投資対効果で、以下の5つのセグメントの顧客を自社プロダクトの購入と継続購入に導き、収益性を継続的に高めることである。価値を生み出す顧客戦略を明確にし、組織内で部門横断で共有することで、組織全体の活動に一貫性と効率性をもたらす。
3.顧客動態(カスタマーダイナミクス)
マーケット全体の顧客の動き(変化)を把握する。マーケット全体の顧客数を100%として、次の5つに分類する。
①ロイヤル顧客
②一般顧客
➂離反顧客
④認知未購買顧客
⑤未認知顧客
この5つのセグメントを動態で捉え、顧客の動きを可視化する。
潜在的なロイヤル化顧客(一般顧客のロイヤル化、ロイヤル顧客のさらなるロイヤル化)①潜在的な復帰顧客(離反顧客の復帰)
②潜在的な新規顧客(認知未購買顧客の新規顧客化、未認知顧客の新規顧客化)
➂潜在的な離反顧客(一般顧客、ロイヤル顧客の離反)
これら4つは並行して投資対効果を高め続ける必要がある。そのために、カスタマーダイナミクスを可視化し、各々異なる顧客動態に対応する顧客戦略(WHO&WHAT)を洞察することが重要である。
1人の顧客を徹底的に理解し拡大展開する方法なども紹介していますので、是非、皆様方にも読んで頂けたらと思います。
アイネックス税理士法人 西口
2022/08/03
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