実力も運のうち 能力主義は正義か? マイケル・サンデル
成功とは、自分自身の努力の結果もたらされるもの。
成功したいのであれば、努力しなければならない。
とても当たり前のことだと思います。
著者は、このような、「能力主義」が行き過ぎた結果、
自分が努力することにより成功を手にしたと思い込む、傲慢なエリートと、
成功できなかった敗者との間に、分断がもたらされていると指摘しています。
成功者は、今の恩恵(収入、地位、環境など)は、
自分だけの努力の結果だから、自分はその恩恵に値する存在だと思い上がり、
たまたま自分の能力を活かせる時代に生まれた幸運や、
誰の助けもなく一人で生きていける人などいないのだいう事実を見ようとしない。
そして、誰かの失敗は、その人の努力不足や、落ち度の結果に違いないと見下し、
他者の立場で考えることが難しくなってしまいます。
他方、敗者は自分にもあらゆるチャンスがあったにも関わらず、
成功できなかったのは自分が努力しなかったからだと、
屈辱感や劣等感を感じつつ、成功者から見下されていることに、強い怒りを感じます。
もちろん、全く同じ環境と能力であれば、より努力した人が成功する社会はいいと思います。
でも、そもそも戦争、貧困、病気など、努力することができる環境にいない人がいたり、
人は機械ではないので、同じ努力で全員が同じ結果を出すことができるわけではないことを忘れず、
今自分が努力できる環境にいることに感謝する謙虚さを持たなければと、思いました。
Y・M
2022/04/26
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