国税の新年度
猛暑が続く、今日このごろ。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
先日、大阪国税不服審判所で勤務していた際にお世話になった現職の国税職員の方から、暑中見舞いのお葉書を頂戴しました。そのお葉書には、その方の次の異動先が記載されていました。
「あっもうこんな時期か」と思うと同時に、新年度に入りこれから税務調査も本格始動するなと・・・。(ちなみに国税の異動は毎年7月10日です。)
私は、税理士からの民間採用で平成28年度から3年間国税審判官を務めたことがあり、退官して丸2年が経ちました。この時期になると、なぜか国税審判官時代のことをよく思いだします。
私がなぜ国税審判官を当時志望したかといいますと、前職で審理関係の仕事をしていたことも理由の一つとしてありますが、国税の不服申立てや訴訟において判断権者が証拠をどのように吟味し、どういう思考で結論を導き出しているのかを学びたかったことが一番大きな理由です。
退官後のキャリアアップとして審査請求のお手伝いをする専門の税理士になりたかったわけではなく、申告をする前から争点となりそうな事項をピックアップし、その争点に関する証拠収集、客観的な証拠評価、解釈をするためのものさし(法令解釈)の収集、類似の事例の収集(裁判事例、裁決事例)などを通じ、日々適切な処理を行うための予防法学として、審判所での経験を活かしたいと考えていました。
やってしまったことを変に取り繕うとすると主張に無理が生じます。だからこそ、税務調査が来てから焦るのではなく、常日頃から問題意識を持つことが大切です。そして、税務会計のおいては月次監査の段階、相続においては申告期限までの少ない期間から上記のような証拠収集などの準備を開始し、リスクがある場合はクライアントにリスク説明をし、そのリスクを共有することで初めて将来の税務調査に対応できる状態を作ることができます。これらの作業は、クライアントとの良好な関係を維持するためにも必須の作業であるといえます。
また、申告の精度を上げることで、税務署との信頼関係を築き、その結果、国税職員がより悪質な脱税事案などの調査に専念できる環境を作るのも、税理士の役目でもあり、ある意味、民と官でのwin-winの状態を作れるものと個人的に信じています。
弊社では、年60時間の研修義務をスタッフに課し、税にかかわらず、例えばSDGsなどの社会問題についてのプロジェクトを立ち上げるなど、日々スタッフ一同が自己研鑽する体制が整っています。また、申告書についても、必ず担当以外の複数の第三者の目を通していることはもちろんのこと、複雑な案件など必要に応じて事前の社内稟議を行うこと、相談のしやすい風通しのいい職場環境を作ることで申告書の信頼性を担保しています。
私自身は、専門は相続などの資産税の分野ではありますが、審判所での経験を活かし、資産税のみならず、会社や個人の税務申告についてのスタッフからの相談対応、申告書・稟議書のチェック等も行っています。私自身分からないことだらけですが、だからこそ税務は奥が深く、おもしろいのかもしれません。
初心を忘れずに日々自己研鑽したいと思います。
アイネックス税理士法人 野又
2021/07/26
- 税務・会計について