現代語訳 論語と算盤
今回ご紹介する本は、渋沢栄一の現代語訳「論語と算盤」です。
以前、別の類の「論語と算盤」を読んだ事があるのですが、新札や来年に大河ドラマが始まる事により、近年話題に挙がる事が多かったので、改めて本書を読みました。
ご存じの方も多いと思いますが、渋沢栄一は幕末から明治~昭和までを生き抜いた起業家で、470社以上の会社の設立に関わり、「日本資本主義の父」と呼ばれている人です。
みずほ銀行や東京ガス、帝国ホテルなど、多くの会社の設立に彼が関わっています。
「論語と算盤」は10章から成っています。
タイトルにある「論語」とは、人間性、人格の磨き方、リーダーとしての「あり方」、人との付き合い方を学ぶものだとしています。
「算盤」とは、技術を学び、会社で仕事をして価値を生み出し、国を豊かにすることだ、としています。
要するに渋沢栄一は、論語から人格形成を学び、資本主義の利益主義一辺倒にならず、バランスをとることが大切であると本書全編にて説いています。
特に私が印象に残ったのは、逆境に対する渋沢の考え方です。
「世の中には逆境は絶対に無いとは言い切ることはできない~宜しくそのよって来る所以(ゆえん)を講究し、それが人為的逆境であるか、ただしは自然的逆境であるかを区別し、しかる後これに応ずるの策を立てねばならぬ。自然的の逆境に処するに当たっては、まず天命に安んじ、おもむろに来たるべき運命を待ちつつ、撓(たゆ)まず屈せず勉強するがよい。それに反して、人為的の逆境に陥った場合は如何にすべきかというに、これは多く自働的なれば、何でも自分に省みて悪い点を改めるより外はない。」原文より
整理すると、逆境は以下の二つに区分ができると言っています。
人為的な逆境とは、自分の力で解決できる問題。
自然的な逆境とは、自分一人の力ではどうしようもない大きな問題。
そして、人為的な逆境に対しては、自身の判断・行動が原因であるため、自身が反省し改めることをするのみ、と。
自然的な逆境に対しては、それに逆らわず自然がもたらす運命を受け容れるしかない。ただ、その間、あきらめず、一生懸命に勉強や努力をし続けることが重要である、と。
現在において、自然的逆境とは、まさしくコロナウイルスがそうではないでしょうか。
まだまだ終息が見えない中、世の経営者の方々は、日々苦悩をされていると思います。
そのような中、この資本主義の父である渋沢が、自分の力ではどうしようもできないのだから、受け入れるしかない、というメッセージを発してくれていると思うと、少し気が安らぐのではないでしょうか。
今回の取りあげた内容以外にも、現代経営者の方々の心に、きっと響くであろう言葉が多数ありました。
もし、まだ読んだことがない方がおられましたら、現在話題になっているのを機会に一度読んでみてはいかがでしょうか。
アイネックス税理士法人 新井
2020/11/16
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